最近知り合った方や以前からの知り合いでも、「自宅でみつばちを飼いたいと思っている」と相談されることが多くなってきました。
「みつばちを飼う」と一口に言いますが、日本には「西洋みつばち」といわゆる「日本みつばち」と呼ばれる在来種の東洋みつばちがいます。
西洋みつばちは、管轄の役所に登録をしなければならない家畜という扱いになります。そのため「飼う」といえるのは西洋みつばちです。
一方、日本みつばちは「飼う」というより、「いてもらう」という感じなのです。入居してもらえたらラッキーな生き物。
まずはこういったことを知ってから始める必要があります。
今回は、養蜂に興味があるなら知っておきたい
- 日本みつばちと西洋みつばちのこと
- 養蜂のメリットとデメリット
- 養蜂のはじめ方
- 養蜂をやりたくても、今の環境では難しいと感じている人ができること
など、についてご紹介したいと思います。
目次
西洋みつばちと日本みつばちの違い・特徴について
「ブンブンブン、はちがとぶ」というあの歌をイメージしてください。どんなみつばちを思い浮かべますか。
黄色と黒のシマシマのあの小さな針を持った生き物、というイメージが一般的にあると思います。それが明治時代にアメリカから入ってきた西洋みつばちです。
これはイタリア原産種で養蜂のために家畜として改良されてきたみつばちを指しています。
西洋みつばちは、日本では野生化できず、人にお世話されていないと生きていくことができないといわれています。地域の保健所に家畜として登録することが義務付けられています。
「みつばちを飼う」といったら、この西洋みつばちのことを指します。
他方、日本みつばちは在来種で、最も古い記録では日本書紀の中で、養蜂をしようとしたが失敗したということが出ています。
これはなぜかというと、日本みつばちはそもそも野生のみつばちだからです。
黒と黄色ではなく、どちらかというと黒と灰色での縞模様で、西洋みつばちより一回り小さいとても繊細な生き物ですが、人と共生することが可能です。
ところが、そもそも野生の生き物なので、気に入らないと巣箱にも入らず、入ったと思ってもある日突然出て行ってしまうこともあるようです。
ただ、うまくいけば週末だけ様子を見ればよく、普段は巣箱の中を開けなくてもいいことから、「週末養蜂」というワードで、昨今人気が出ています。
私も、1年間この場所で養蜂ができたらいいな、と思うところに箱を置いて待ってみましたが、うんともすんともいかず断念しました。
置いてみて、スッとご入居いただけることもあるそうで、なかなか一筋縄ではいかないのが日本みつばちです。
そういう理由から、外まきに見守ることが多いので、「飼う」といわない人も多いのです。
養蜂のメリットとデメリット
自宅養蜂のメリット
養蜂の目的といえば、「はちみつが食べられること!」と答える方も多いでしょう。
はちみつがどれほど素晴らしいものであるかはご存じのとおりですが、他にも免疫力を上げることで知られるプロポリスやプロテインなどを含みスーパーフードといわれる花粉なども大変、人気です。
もしあなたが養蜂家になれば、高価に取引される本物の健康食品を手に入れられることができます。これは、養蜂をする最大のメリットといえるかもしれません。
私はみつばちを飼う最大のメリットは、みつばちをとおして自然を身近に感じることだと思います。
みつばちを飼い始めると、周りに咲く蜜源植物が気になり始めます。そして、お天気の動向を気にして、雨が長く続くと、みつばちたちはお腹が空いてないかなと心配になったりします。
風が強いと巣箱の屋根は飛ばされずに無事かなと気になり、今まで何も感じなかった日常に目が向くようになります。
そこからなんでもないときにも花が咲いていると笑みがこぼれたり、空を見上げて気分転換ができたり、これまで以上に自然を身近に感じられるようになったことが最大のメリットだと思っています。
そしてもちろん、様子を見ているだけで可愛くて一生懸命で、もふもふしていて、見ているだけで幸せになるという、みつばちが側にいることで幸せを享受できるのもメリットだと思います。
みつばちと人間は気持ちを交わすことができるので、家族の一員のように感じる人も多くいます※。
その一方で、生き物を飼うということはよいことばかりではありません。メリットや楽しさばかりを強調しすぎて、やってみてすぐに「やっぱりやめよう」とならないためにも、責任を持ち、スタートするのが大事です。
※みつばちと人間が気持ちを交わせることについてはさまざまな書籍に書いてあったり、実際にそう感じる養蜂家さんが多いです。私も同様に感じています。
自宅養蜂のデメリットは?
養蜂をするとき「蜂に刺されないの?」と不安に感じる人も少なくありません。ですが、蜂が刺すということは蜂の生態を知っていれば絶対ではないですし、頻繁にあることではない、ということを理解できると思います。
何事もそうですが、生き物ですから付き合い方が大切です。
みつばちたちは自分や自分の家族に危険を感じたときに自らを守るために人を刺すことがあります。
だからまずは、みつばちたちの生態・行動を知ることが大切です。
もし刺されたとしても、みつばちたちの持つ毒はスズメバチの毒とは種類が違うということ、みつばちのアレルギーを持っていない限り命に係わることはない、といわれています。
ですが、気になる方は専門書を読むなど、一度しっかり調べることが大切です。
蜂の毒については、『蜂針治療』という民間療法も存在していて、健康促進に使われることもあるようです。
不必要に怖がらず、まずはきちんと蜂のことを知ることからはじめてみてください。
そして、みつばちの蜂児を狙うスズメバチが来てしまうということもデメリットとして挙げておきます。
スズメバチは大きくて見た目も怖い、強そうな印象のある蜂ですが、スズメバチが来ること自体は必ずしもデメリットではありません。スズメバチは家庭菜園の畑の青虫など、作物を食べてしまう虫たちを駆除してくれます。
こういうことを知っておくだけでも、心理的なハードルは下がりませんか。
実際には、スズメバチは人間には興味がないので、人から攻撃しない限りは突然向こうから刺してくるということも、みつばち同様ほとんどありません。
みつばちを飼うときの工夫も大事
みつばちから刺されないか不安…という方は、みつばちを育てるスペースを工夫することで、予防することができます。
例えば畑などで、人間活動するスペースと距離が近すぎるとみつばちが騒いだり、場合によっては攻撃的になり、人間の活動を邪魔する可能性があります。
実際に、私は実家の畑の端に置いていますが、畑を耕そうと鍬を振り回していたら、それをやめて欲しそうにみつばちたちが飛び回っていました。
ですが、私は気にせずそのまま耕し続けていたらなんと、刺されてしまいました。
その時、畑仕事だけ終え養蜂箱を開けないつもりだったため、養蜂時のように装備しておらず、見事に刺され腫れてしまいました。
西洋・日本みつばちそれぞれに合った養蜂を
そしてもちろん、はちみつの生産量を増やすためには、西洋みつばちと日本みつばちでは異なる世話が必要になります。
どちらも、完全にほったらかしでいいというわけではないので、それなりに準備と覚悟は必要です。
養蜂の始め方
私は本を読み、ネットで情報検索をし、実際に教えてくれる人を見つけて、実践しながら手探りで養蜂しています。
養蜂をやっている人が増えているとはいえ、周囲で養蜂をしている人を見つけることは簡単ではありませんでした。
みつばちの購入するところから、人の伝手をたどって、知り合いの知り合いと繋がって、ようやくみつばちを購入することができました。
また、日々さまざまなことが起こるので、その都度本を読んだり、知り合いに教えてもらったり勉強・実践を繰り替えしています。
養蜂を続けていくためには、勉強会などを実施しているプロが所属する養蜂組合のようなコミュニティも活用できるといいですね。 そして、蜂たちに病気などが広がることを防ぐために、自分のエリアの保健所畜産課に養蜂を届け出る必要があります。
これは趣味であっても、西洋みつばち日本みつばち問わずする必要があります。詳しくは、お近くの保健所に問い合わせてみることをおすすめします。
そこで、本当にやってみようと思ったら、養蜂道具を購入したり、みつばちを購入する養蜂会社などを検討するという段階に始めて入るといいでしょう。道具も最初は最低限必要なものから揃えてみましょう。
【最低限必要なもの】
綿布、箱、煙をかけてみつばちを落ち着かせる燻煙機、巣を取り出すのに使うツールとビニールゴム手袋
【徐々に揃えていけばいいもの】
遠心分離機、スズメバチ捕獲機、糖度計、みつろう精製機材
養蜂を始めよう、と思ったらまずは、どんな世話をしなければならないのかを知るところから始めて、登録、購入先などのステップを踏む必要があるということをここでお伝えしました。
最後に、「でも、なかなかそこまではできない」と思った方にも、みつばちのためにできることはあります。
養蜂に興味はあるけど、難しそう!という方へ
『みつばちを飼わなくても、みつばちのためにできること』それは、ズバリ、蜜源を作ること!
お花を育てたり、木を守ったり、みつばちにとって必要な食べ物である花粉とはちみつを作るためのお手伝いをしてあげてください。
プランターのお花でも、みつばちは喜んでやってきますよ。ハーブや家庭菜園はもちろん、桜の木やアカシアなどの木の方が効率よく蜜を集められます。ぜひ、桜並木があるところでは残していってほしいなと思います。
そして、みつばちは、氣のいいところにしか来ません。来ていたら幸運です。
こういうことも育てながら楽しめる要素になるのではないでしょうか。
さらには、みつばちが来ていることを発信することで「みつばちは減少している…」と思っていた人たちにも、「ちゃんといるんだ!」ということを伝えていけます。
このようにして潜在意識的に、みつばちがいる世界を作っていくことができると私は思っています。
自宅養蜂のすすめ「まとめ」
今回は、みつばちを通して、自然との共生を肌で感じることができるということをお伝えしました。 また、自宅養蜂をやるためには責任や覚悟、準備が必要なこともご紹介しました。
実際にみつばちのことを調べ始めると、知らなかった世界がまだまだ広がっていることを知り、養蜂を始めてよかったと感じています。
そして、もっともっと、「日常的に多くの人がみつばちに関わってくれたらいいな」と思っています。
今後は養蜂コミュニティーなども作っていくのが私の目標です。
ご自宅での養蜂にご興味ある方は、ぜひチャレンジしてほしいなと思います。
参考:
“山田養蜂場” 健康科学研究所HP”「蜂針治療について」https://www.bee-lab.jp/megumi/beevenom/health.html ,アクセス2023
”農林水産省”「養蜂について」https://www.maff.go.jp/j/chikusan/kikaku/lin/sonota/bee.html ,アクセス2023年6月23日