近年の発酵食品ブームと同時に、いま「酒粕」が見直されているのをご存じですか。
酒粕は、日本酒の製造工程で生まれる副産物です。
粕(かす)といわれますが、とんでもない! 実は酒粕は、豊富な栄養を含み、その栄養効果と美容健康への効果が期待され、大きく注目されるようになりました。
昔からある日本の発酵食品ですが、最近では残念なことにその貴重さは見落とされ、また多くの人が使い道に悩んでしまいがちな食材でもあります。
実はすごいパワーを秘めている驚異の発酵食品「酒粕」についてその栄養素や効果、保存方法について紹介します。
目次
酒粕って、何?
「酒粕」とは、日本酒を作る過程で、醪(もろみ)を搾ったあとに残る白い固形物のことをいいます。
酒米を醸造するとその重量比20~25%ほどの酒粕取り出されます(大吟醸などは50%を超える場合もあります)。
酒粕の成分は、水分・炭水化物・たんぱく質・脂質・灰分(かいぶん)が含まれ、その他ペプチド・アミノ酸・ビタミン・麹菌・酵母・酵母菌由来のβ‐グルカン、葉酸など豊富な栄養素が含まれています。
このように、酒粕には美容と健康に嬉しい成分がいっぱい含まれています。
酒粕が食卓から消えつつある訳
最近では、食卓で見かけることがなくなりつつある酒粕。その理由には、近年の日本酒の売上低迷や作り手の減少などがあげられます。それとともに年々日本酒の生産量が減少し、食卓から姿を消しつつあるのです。
また、酒粕の使い道として主に飼料か肥料として処理されているということも、酒粕が食卓から遠のいていった原因でもあるようです。
ですが、江戸時代には粕(かす)とはいわず、「手握り酒」「酒骨」呼ばれていた酒粕。決して、搾りかすではなく栄養豊富な貴重な食材なのです。
酒粕の栄養成分と美容・健康にいい理由
科学技術庁(現文部科学省)編の【五訂 日本食品標準成分表】によると下記の表のようになっています。
食品名 | 酒粕 | 白米 | りんご | |
たんぱく質(g) | 14.9 | 2.5 | 0.2 | |
炭水化物(g) | 23.8 | 37.1 | 14.6 | |
ビタミンB郡 | B1(g) | 0.03 | 0.02 | 0.02 |
B2(g) | 0.26 | 0.01 | 0.01 | |
ナイアシン(g) | 2 | 0.2 | 0.1 | |
B6(g) | 0.94 | 0.02 | 0.03 | |
葉酸(μg) | 170 | 3 | 5 | |
パントテン酸(g) | 0.48 | 0.25 | 0.09 | |
食物繊維 | 5.2 | 0.3 | 1.5 |
上記の表を見ると、白米・りんごと比べ、ほとんどの栄養素の含有量が上回っていることがわかります。
妊婦さん・胎児に必要といわれている「葉酸」はりんごの35倍、「食物繊維」は約3倍強も含まれています。
その他、シミやしわの予防によいとされているナイアシンは白米の10倍、健康な皮膚や爪・髪をつくるビタミンB2は白米の26倍も含まれています。
このように栄養の宝庫酒粕ですが、その摂取には注意が必要です。
注意!酒粕を控えたほうがいい人
酒粕は、小さなお子さんやアルコールの弱い方、運転前・運転中にはおすすめできません。
酒粕の状態にもよりますが、アルコール分(エタノール)が約8%残っているので、小さなお子さんやアルコールに弱い方、運転時・前に食べるのは控えましょう。または、十分に加熱してアルコール分を飛ばしてからいただいてください。
驚異の発酵食品「酒粕」の栄養と効能・メリット
酒粕は、日本酒の原料の酒米・米麹の栄養素が丸ごと凝縮されているだけでなく、その過程でさらに栄養価が上がっている食材のため、さまざまな成分や栄養を摂ることができます。
発酵食品であり食物繊維も豊富なので、腸内環境改善を期待でき、免疫力アップにもつながります。また、酒粕(日本酒)にはがんになりにくい体質を作る成分が含まれているということも最近の研究でわかっています。
酒粕を料理に使う5つのメリット
- 「必須アミノ酸」9種類が入っている
酒粕には、体を作る良質なタンパク質「必須アミノ酸」9種類が含まれている。
アミノ酸が白米に比べて500倍以上も含まれているが、これは発酵の過程で酵母菌がアミノ酸を爆発的に増やすためで、このアミノ酸はうまみ成分でもあり、人の体内では作ることができない。そのため、食物からしか摂取することができない。 - 食材の保存が効く
酵母菌のアルコールや乳酸菌の乳酸などが他の菌を抑制してくれるため、食材の保存性が増す。 - 消化・吸収しやすくなる
- 栄養価が増す
- おいしさアップ
料理にコク・旨みが増す。
など、酒粕を料理に使うと嬉しい利点がいくつもあります。
また、近年最も注目されている話題の成分「レジスタントプロテイン」が豊富に含まれています。
健康効果が期待されるレジスタントプロテインとは?!
レジスタントプロテイン(Resistantprotein)とは、「消化されにくいたんぱく質」という意味です。
近年、注目されている健康成分の一つで、油を吸着するという点で食物繊維と同じような特徴があります。酒粕の他、大豆・凍り豆腐、そばに含まれています。
このレジスタントプロテインは、体内に入ったあと消化されにくいためそのまま腸へ運ばれます。そこでコレステロールや食品の脂質や油を吸着し、便として体外へ排出されます。そうすると便中の脂質が増えるため便が柔らかく、排出されやすい状態になります。
酒粕は、便秘改善やコレステロールの低下、肥満抑制作用が期待され、ダイエットや生活習慣病予防にもぴったりの食材です。レジスタントプロテインのほか、麹菌や酵母、乳酸菌も豊富に含まれていることから、お腹にやさしい食材です。
簡単に料理にもスイーツにもアレンジできる酒粕レシピ
酒粕のレシピで一般的なのは甘酒や粕汁ですが、その他にお料理やスウィーツ作りなど、多くのレシピに活用できます。
酒粕を肉や魚の下味をつけるときに塗り込みしばらく漬けておくと、酒粕の酵素の働きによって身が柔らかくジューシーに仕上がり、消化・吸収しやすくなります。
酒粕味噌を常備しておくと、簡単なお漬物や肉・魚を漬け込んでおくのに便利です。
※お漬物の場合は、小さなお子さんやアルコールの弱い方、運転前は控えてください。
酒粕の保存方法と期間
酒粕は、冷蔵で約半年、冷凍で一年ほど保存することができます。
✔冷蔵保存の場合
未開封ならそのままで冷蔵保存します。
開封したものは、パッケージ袋に入れたままジップロックなど密閉できる保存袋に入れ空気を抜き、冷蔵保存します。
そのまま保存していると、袋に空気が入り膨らんでくるので、時々空気を抜いてあげてください。
冷蔵で半年ほど保存可能ですが、可能な限り早めに使い切りましょう。
✔冷凍保存の場合
冷凍する場合、開封後の場合はパッケージ袋から取り出し、ラップして密閉し、ジップロックなどの保存袋に入れ保存します。このとき板状の酒粕は、一枚ずつラップするとあとで使いやすいです。
ペースト状やそぼろ状の酒粕は、ラップで包む際にできるかぎり薄くして密閉し、保存してください。使用するときは、常温で解凍してから使ってください。
開封したものは、すぐに使う場合は冷蔵保存がおすすめですが、中々使わないという方は、長期保存が可能な冷凍で保存するのがおすすめです。
参考資料:
「酒粕の栄養」https://www.sakekasu.com/nutrition.html
「Sake Sennin」http://www.sake-sennin.jp