今回は、女性のライフステージに合わせた「布ナプキン(以下、布ナプ)の活用法」について。
女性は性ホルモンの分泌の変化によって、一生を通じて心身ともに影響を受けます。
思春期から性成熟期を経て更年期・老年期を過ごす中で、波のようなホルモンの周期に合わせて、不調が生じることもありますよね。
布ナプは、生理のある期間だけのものではありません。 女性のライフステージに合わせて、女性の人生に寄り添う活用方法をご紹介したいと思います。
目次
思春期の布ナプ活用~初潮期
思春期とは8~18歳くらいまでです。 初潮がはじまるのはおよそ12~15歳くらいです。
初潮を迎えたとき、まず多くの方が手に取るのは使い捨てナプキンです。 ですがこの時期こそ、生理用品にはいろんな種類があることを知っていただきたいなと思います。 そして、自分のライフスタイルや体に合ったものを選択できると、人生がより充実すると思います。
学校で教わる生理について
皆さんは、学校で生理について学んだときのことを覚えているでしょうか? もしくは、これから生理を迎える方やお子さんがいるという方はどうでしょうか?
学校の授業で生理について学ぶ際、生理用品として使い捨てナプキンの紹介とその使い方の説明を受けると思います。
初潮を迎えたときに、「使い捨てナプキンしか教わらなかったから」「選択肢があることも知らなかったから」という理由で、長年使い捨てナプキンを使い続ける人がほとんどではないでしょうか。
生理用品にはさまざまなものがあること、体調やライフスタイルに合わせて自分で生理用品を選べる、ということを知っている女性は少数です。
使い捨てナプキンは便利ではありますが、お肌がかぶれたり、すれて痛くなったりという方もいます。 特に初潮期の肌はとてもデリケートです。
繊細な肌を守るためにも、いろんな選択肢から選べると安心ですよね。
また、生理周期が安定するまでは初潮から約3~4年かかるといわれています。 はじめのうちは、脳からの指令が卵巣に上手く伝わらなかったり、子宮の動きもスムーズにいかないためです。
そのため、いつ生理になるか不安で、毎日使い捨ておりものシートを使用している方も多いようです。
長時間、長期間に渡り使い捨てナプキンを使用することで肌トラブルにつながることもあるのです。
初潮期こそ布ナプをすすめる理由
初潮を迎えた時期こそ、布ナプはおすすめです。
まだ生理にも慣れていないうちに布ナプを使用するのは不安、という声もよく耳にします。
ですが、自宅で過ごしているときだけ布ナプにする、生理期間以外の使い捨ておりものシートを布ナプに代えるなど、少しでも肌あたりのやわらかい布ナプを使用してみてください。 かぶれが軽減されたり、改善するかもしれません。
また、経血の状態を知っておくということも大切です。 生理は辛いものではなく、生理のちょっとした変化に気づくことで、自分の体からのサインを受け取れるチャンスと捉えられるようになるといいですよね。
そのほかにも初潮を迎える前から、生理について知っておくことも大切です。
さまざまな生理用品について調べたり、身近な大人が伝えてあげたり、すぐには必要なくても生理用品の選択肢が多いほど自分のライフスタイルや体調に合った生理用品を使い分けることができます。 さらには、生理の悩み軽減につながるかもしれません。
性成熟期の布ナプ活用~妊娠・出産期
性成熟期とは19~45歳くらいです。 生理周期も安定し、妊娠や出産を経験するかもしれない時期です。
本来は卵巣の働きも、ホルモンのバランスもいい状態の時期ですが、不規則な生活や食生活の乱れなどによって生理不順、PMS(月経困難症)やPMDD(月経前不快気分障害)※1、かぶれ、その他婦人科系の悩みを抱える方も多い年代です。
布ナプを取り入れることで、個人差はありますがかぶれがなくなったり、生理痛が軽減されたり、なくなったという方もいらっしゃいます。※2
生理期間中に毎日布ナプを使用することが難しい方も、休みの日やご自宅で過ごすリラックスタイムのみ布ナプを使用するという方もいます。
※1 PMDD(月経前不快気分障害)とは、PMSの中でも精神の不安定さが特に強く出る症状です
※2 PMSやPMDDなど症状がひどい場合には、医療機関を受診されることをおすすめします
妊娠中にも布ナプをすすめる理由
布ナプは生理のない妊娠中にも、おりものや軽い尿もれ用として使えます。
妊娠中は、つわりやホルモンバランスの変化でさまざまなストレスにさらされます。
また、おりものの量が増え、使い捨てナプキンや使い捨てのおりものシートを常用することで、デリケートゾーンの肌トラブルが起きる方も多くいます。 そんな時にもショーツと同じ感覚で使用できる天然素材の布ナプがおすすめです。
産後の悪露(おろ)にも布ナプを
産後の悪露に布ナプを使用する方もいらっしゃいます。
産後は体も心もとてもデリケートな時期です。 そういうときこそ体にやさしく、安心感があるものをと選ぶ方も増えています。
ですが、産後は体調が不安定だったり、授乳などで布ナプのお洗濯が追いつかないなど、逆にストレスになってしまう場合もあります。 そのようなときは無理せず使い捨てナプキンを使用し、悪露の量が減ってきたころから布ナプにするなど、ご自身が心地よい方法を探してみてください。
更年期・老年期の布ナプ活用~ゆらぎ世代期
更年期とは46~55歳くらい、老年期とは56歳からのことです。 最近では、「ゆらぎ世代」といわれている年代です。
ゆらぎ世代とは、閉経を迎える前後5年のおおよそ45~55歳ころまでの約10年間に、女性の体が成熟期から老年期に移り変わっていく時期のことをいいます。
この時期は女性ホルモンの分泌が急激に減少することでホルモンバランスが乱れ、 今までとは違った体の変化が起きる不安定な時期で、心身の変化や不調を感じる人も多いようです。
閉経期の布ナプ活用
閉経したかどうかの判断は、最後の月経から1年間月経がないことが目安になります。※
閉経の時期が近づいてくると月経周期が乱れ、いつ生理が来るかわからず、使い捨てのおりものシートが手放せないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。 そんなときにも布ナプは活躍してくれます。
布ナプは布なので、ショーツと同じ感覚で過ごせますし、急な出血があったときも対応してくれます。
閉経後、生理がなくなるので布ナプは必要ないと考える方が多いと思いますが、実は布ナプは閉経後も活用できます。
布ナプは天然素材で作られているものが多いので、肌に触れたとき、暖かさを感じるというご感想も多いです。 私も布ナプを着けていると、お腹の中までポカポカする感じがします。
このように「冷え対策」としても布ナプはおすすめです。 実際に閉経後も、おりもの用サイズの布ナプを毎日使用しているという方も私の周りにはたくさんいらっしゃいます。
また、尿漏れが気になる場合にも布ナプを使用する方が多いです。
※この時期の不正出血は、月経と間違いやすいので注意が必要です。不安な出血などがある場合には医療機関を受診されることをおすすめします。
フェミニンケアに
フェミニンケアとは、女性のデリケートゾーンのケアのことをいいます。
海外ではすでに多くの女性に知られているケアです。 最近では、フェムケア、フェムテックなどの言葉も広く知られるようになってきました。
フェミニンケアとは具体的には、
◎デリケートゾーンを清潔に保つ
◎デリケートゾーンを保湿する
◎トイレに行った後は専用スプレーでケアする
◎肌に優しいショーツをつける、ゴムのないもの、ゆるめのショーツを身に着ける
◎膣トレをする※3
などです。
※3 膣トレとは「膣トレーニング」のことで、骨盤底筋という筋肉を鍛えるトレーニングです。
フェミニンケアの1つである、肌にやさしい素材の下着を身に着けることにも、布ナプは活用できます。
天然素材の布で作られたショーツは価格が高いものも多いので、代わりに今持っているショーツに小さいサイズの布ナプをつけ、使用しているという方もいます。
手軽にフェミニンケアができ、かぶれも軽減され、かぶれなくなったというご感想もいただくので簡単にできるおすすめのセルフケアです。
今は、生理用品も自分に合ったものを選ぶ時代です
一昔前と比べると初潮を迎える年齢は低年齢化し、生涯の出産回数が減っている一方で、生涯の月経回数が増えています。 ですが、閉経はおよそ50歳ころと昔とそう変わらないそうです。
これは、昔は一生涯で50回程度しか来なかったといわれている生理が、現在ではなんと450回も来ているということになります。 現代の女性の子宮への負担は、かなり大きくなっているのです。
そう考えると、普段どんなものを選びどのようにケアすればいいか、生理用品1つとっても自分に合ったものを選ぶということがより大切になってきます。
そして女性ホルモンの一生の変化と、毎月の周期について知り、「今、自分がどこにいて」「体はどんな状態なのか」を知ることも大切です。
体調の変化、生理の変化に気づきやすい布ナプは一生を通じてすべてのライフステージに合わせ、さまざまなシーンで使うことができます。
ぜひ、本記事を参考に布ナプを手に取っていただけたら嬉しいです。
参考資料:
「女医が教える閉経の教科書」医学博士・産婦人科医 善方 美裕美 秀和システム
「不調をなおしてキレイになる女性ホルモン基本事典」成美堂出版 私のクリニック目白 院長 平田雅子 監修
「ちつのトリセツ 劣化はとまる」径書房 Be born 助産院・産後養生医院 委員長 たつのゆりこ 指導・監修 原田 純 著