アーユルヴェーダでは、身体、心、精神のバランスを調えるための総合的なアプローチをおこないます。その中で、時間帯別の過ごし方は大切な要素の1つです。
アーユルヴェーダでは時間帯によってエネルギーの性質が変わるとされ、自分がどの本質であっても、各時間帯が持つ性質(ドーシャ)の影響を受けやすくなるとされています。
1日の中でも時間帯によって、「自然のエネルギーが体にどう作用するか?」が変化するわけです。
そのため、時間の質を上手に活用することで心身の調和が取りやすくなると考えます。
時間には、1日の時間帯だけでなく、一生涯でみた時間(年齢)・季節がありますが、ここでは1日の時間帯別のおすすめの過ごし方と、それぞれの時間帯が持つ性質についてご紹介します。
目次
アーユルヴェーダ3つの性質(ドーシャ)
アーユルヴェーダの時間帯別性質と過ごし方を紹介する前に、まずは予備知識としてアーユルヴェーダ3つの性質について簡単にまとめてみました。
ヴァータ(Vata):
- 風と空の要素から構成される
- 軽い、動く、冷たい、乾燥など
- 運動・運搬・伝達など
ピッタ(Pitta):
- 火と水の要素から構成される
- 熱、鋭さ、流動性など
- 消化・代謝・変換、知的活動など
カパ(Kapha):
- 地と水の要素から構成される
- 重い、冷たい、油性、安定性など
- 構造の維持、体力、免疫力など
これら3つのドーシャの働きがバランスが取れていると、健康な状態であると考えられています。
アーユルヴェーダ1日の時間帯別性質とおすすめの過ごし方
アーユルヴェーダでは、1日24時間の中で3つの性質とエネルギーが移り変わるサイクルがあります。
アーユルヴェーダの1日の時間のサイクル:
6~10時までがカパ(地と水) 10時~14時までがピッタ(火と水) 14時~18時までがヴァータ(風・空) |
その後も同じサイクルで移り変わります。
18時~22時までがカパ 22時~2時まではピッタ 2時~6時まではヴァータ |
このように、24時間の中で「カパ→ピッタ→ヴァータ」のサイクルが2周します。
では、それぞれの時間帯についてみていきます。
朝(6:00 – 10:00):「カパ」(Kapha)が優勢な時間帯
カパは地と水のエネルギー。 重い特徴を持っているので、この時間帯に目覚めると体が重く中々眠気がとれにくいと言われています。 この時間帯に二度寝をしてしまうとさらに体は重く感じます。
そのためアーユルヴェーダでは朝は6時までに起きることをすすめています。
眠気が取れないときは、ストレッチやヨガなどの軽い運動を取り入れ動きをいれると、1日をスタートしやすくなります。
またこの時間に朝食を摂る場合は、軽めがおすすめです。
昼(10:00 – 14:00):「ピッタ」(Pitta)が優勢な時間帯
ピッタは火と水のエネルギーで、身体の代謝や消化が活発な時間帯。
そのためお昼はしっかりいただきましょう。
また集中力が高まり知的活動にも向いている時間帯。仕事や勉強もこの時間がおすすめです。
夕方(14:00 – 18:00):「ヴァータ」(Vata)が優勢な時間帯
ヴァータは風と空のエネルギー。
この時間帯は運動やコミュニケーションに適しています。
人とのコミュニケーションを必要とする打ち合わせや会議もこの時間帯がおすすめです。
夕方に近づくにつれて1日の疲れを感じやすくなるため、そんなときは軽く甘いものを摂るのもよいです。
夜(18:00 – 22:00):「カパ」が再び優勢になる時間帯
活動がゆっくりとなり睡眠へと向かう時間帯です。
夕食は軽めに摂り、消化を助けます。
寝る前には、リラックスできる環境を整え、良質な睡眠を促しましょう。
22時までに就寝すると深く良質な眠りを得られやすいとされています。
夜遅く(22:00 – 2:00):ピッタが再び優勢な時間帯
代謝と変換の時間帯。
身体の修復・新陳代謝が活発に行われます。
寝ている間に身体の再生とバランスを促進し、体や脳がリセットされます。
現代人のライフスタイルでは、22時までに就寝できない人も多いと思いますがその場合は、この時間帯22時~2時の間に出来るだけ早めに就寝しましょう。
早朝・明け方(2:00 – 6:00):ヴァータが再び優勢な時間帯
アーユルヴェーダでは運動のエネルギーが高まる早朝のヴァータの時間を利用して起床すると、1日を軽やかにスタートできると考えます。そのため朝は、6時までに起きるのがおすすめです。
また日の出の96分前から48分間を「ブラフマ・ムフルタ」といい、神聖な時間とされています。
ブラフマ・ムフルタとは、サンスクリット語で
ブラフマ=創造神
ムフルタ=時間
を意味します。
この時間帯は、空気が澄み、神聖なエネルギーが満ちているときとされています。
そしてこの時間帯に多くの生物が活動しはじめます。
実際に私も早朝に起きると野鳥たちが活動しはじめる音が聞こえてきます。 また時間があるときは近くの林道を散歩しますが、この時間帯はシーンと静まりかえり、空気が澄み、ひとりの時間を過ごすのに最適です。 身体と心が深いところからリフレッシュされるのを感じます。
感じ方は人それぞれあるかもしれませんが、自然界・宇宙のエネルギーを受け取りやすい時間とされています。
そしてヨガや瞑想、呼吸法などをおこない精神のクリアリングにも適しています。
静かな時間・環境の中で、瞑想や深い呼吸を行うことで、心と体がリフレッシュされ安定し、内側の平和を感じることができるでしょう。
日本でも『早起きは3文の得』といいますが、ブラフマ・ムフルタは、体・心・精神の健康と成長にとって非常に重要な意味がある時間です。
とはいえ、早朝に起床することがよいとわかっても、多くの人にとってこの時間帯に起きるのはあまり現実的ではありません。 というのも、1年で1番早い日の出入りの日のブラフマ・ムフルタは、早朝というより深夜にあたるからです。
例えば国立天文台によると、東京の場合、1年で1番早い日の出入りの時間が4時25分(2024年6月)。 するとブラフマ・ムフルタは、2時49分~48分間となります。
ですので、毎日早朝に起きることは難しくても、長期休みを利用するなど時々でもいいのでこの神聖な時間を静かに過ごし、自然を感じ、日々の健康や自分らしい幸せを追求してみる。
自分のためだけの時間としてブラフマ・ムフルタを有効活用するのもおすすめです。
自分に合った、時間の質の生かし方が大事
アーユルヴェーダの時間のサイクルは、自然のエネルギーの流れです。
現代の私たちの生活では、時間のサイクルすべてを意識しながら毎日を過ごすのは正直難しく感じるかもしれません。そういう方も朝、いつもより30分だけ早く起きてみる。
毎日じゃなくてもいいから、ほんの少し早起きすることならできそうじゃないですか?
朝にゆとりが生まれると、1日の質が変わる
朝早く起床し、ほんの少しでも時間的な余裕が生まれると1日の質が変わってきます。
例えば子育て中のパパ・ママであれば、朝早く起きても、子どもたちのお弁当を作って、朝食を用意して、幼稚園や学校に送りだす。
そしてようやく自分の朝食を摂り、仕事や予定をおこなう。
こんな感じで朝はバタバタです。
ですが、ほんの少しだけ余裕が生まれるとリラックスする時間が取れ、心にもゆとりを持って1日をスタートすることができます。
そのほかには、『睡眠の質』も変化します。
現代は、睡眠の課題を抱えている方もとても多いですが、朝早く起きるようになると、睡眠促進ホルモン「メラトニン」のおかげで自然と夜も早く眠くなり、質の高い睡眠がとれ、生活に良い循環が生まれます。
メラトニンは、睡眠を促進してくれる働きがあるホルモンです。
日中明るいうちには分泌されず、夕方暗くなる頃から分泌されるという性質があります。分泌されはじめると体温が下がりはじめ、眠気を感じるようになります。このように、身体が眠りに就く準備をしてくれる働きがあります。
ですがメラトニンは朝、日の光が目に入ってから15時間前後(14ー16時間)経たないと分泌されません。そして、分泌されてから4-5時間後(夜中)に分泌のピークを迎えます。
そのため、朝早く起きることが良質な睡眠につながり、翌朝の目覚めも快適になり、1日を元気に過ごせるようになるというわけです。
このように、朝ほんの少し早く起床するだけで、1日のリズムが調い心にゆとりが生まれ、1日の質が高まる流れを作ることができるのです。
アーユルヴェーダの時間帯別の過ごし方は、体・心・精神のバランスを調えるためのガイドラインです。
時間の性質を知って自分のリズムも大切にしながら、上手に自然のサイクルを取り入れてみましょう。すると、あなたにとっての理想的な1日に近づくかもしれません。
健やかで心地いい1日のリズムが作れますように。
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参考:
AYUWEDA式アーユルヴェーダ基礎オンライン講座
上馬場和夫・西川眞知子著『新版インドの生命医学アーユルヴェーダ』
日本看護学校協議会, 睡眠とホルモンの関係, 2024-02-24
国立天文台ウェブサイト, 東京都 日の出入り 2024年6月