最近耳にすることが多くなった「プラスチックフリー」という言葉。
そのほかにも「脱プラ」「プラフリ」「プラなし生活」など1度は聞いたことがあるという方も多いのではないでしょうか。
世界中でプラスチックごみが問題になっている昨今、解決策の一つとしてさまざまなプラスチックフリー(プラスチックを使用しない暮らし)生活を選択する人が増えています。
プラスチック製品は加工がしやすく、軽くて、また比較的安価で手に入ることから、私たちの生活にはなくてはならないものになっています。ですが、そのプラスチック製品のごみ問題や自然への影響、生物や私たち人間への健康被害が問題視されています。
今回は、なぜプラスチック製品が問題になっているのか、ご家庭でも無理なく簡単にはじめられるプラスチックフリー生活を、私が生活の中で取り入れている方法を交えながらご紹介します。
目次
プラスチック製品が抱える問題
1950年代から全世界で生産されたプラスチックのたった9%しかリサイクルされていないといわれています。また、先進国は海外にプラスチックごみを輸出しています。そして、そのごみは現地で不法投棄されたり、海に捨てられたり、野焼きされたりするなど、世界的にも大きな問題になっています。
プラスチックの原料は石油であり、その製造工程でも石油が消費されています。プラスチックをゴミとして焼却する際には、大量の二酸化炭素が排出されます。二酸化炭素が放出されることで地球温暖化につながってしまいます。
また、プラスチックは自然の中で分解されないため、数百年から数千年にわたって、もしくは半永久的に残り続けるといわれています。
海洋プラスチックごみ問題とは?
プラスチックごみは、街や川で捨てられたゴミが海へ流れついたり、不法投棄されたりして、年間800万トンも海へ流れ込んでいます。これはごみ収集車1台分のごみを1分に1回、海に捨てているのと同じ量になります。これらのごみが海を浮遊したり、海底に沈んだり、砂浜や岩場に流れついたりしてごみとなっています。
生物にビニール袋が巻きついて動けなくなっている姿や、海辺に打ち寄せられたペットボトル、川辺や砂浜に落ちているビニール袋やお菓子の袋などを、実際に見たり、または映像などで見たことがある方も多いと思います。
また、私たちが食べている魚の体内からプラスチックが見つかったという話もよく耳にするようになりました。
2050年の海には魚の数よりもプラスチックごみのほうが多くなるといわれています。
さらに海洋プラスチックごみが世界中の海を漂流することで、プラスチックに付着した生物が流れ着いた先の海や海岸の生態系のバランスを崩す恐れがあるともされています。
このように、海を漂流しているプラスチックごみは、海にすむ生き物たち、地球、そして私たちにも大きな問題となっています。
マイクロプラスチックについて
プラスチックごみは、海や川に流され、日に焼け、劣化して段々と細かくなっていきます。これがマイクロプラスチックです。
マイクロプラスチックとは5㎜以下のプラスチックのことをいい、いつまでも自然分解されることなく自然界に溜まり続けます。微小なプラスチックは、大気中、地中、水中あらゆる場所にあります。
このマイクロプラスチックを海の生物が食べてしまい、食物連鎖により魚がそれを食べ、その魚を私たちが食べています。
安価で加工しやすく丈夫なプラスチック製品は私たちの生活を便利にしてくれましたが、今では、プラスチックごみは世界中で大問題となっています。
そこで今回、プラスチックごみを減らすために、私たちが無理なく取り組めることとして、筆者自身やEat Act Tokyoスタッフが実際におこなっているプラスチックフリーの暮らし方をご紹介したいと思います。
無理なくはじめるプラスチックフリー生活~私たちにでできること
1.「キッチン編」
•エコバック(マイバッグ)を持ち歩く
最近ではレジ袋有料化に伴い、マイバックを持ち歩いている方も多いと思いますが、まだまだレジ袋は使用されています。また、植物由来のバイオマスプラスチックは配合率が25%以上であれば有料化の対象になりません。ですが裏を返せば、バイオマスプラスチック以外は何を使用してもいいということになります。
スーパーなどでは野菜は包装されていないものを選べば、それだけでゴミは減ります。また、コットンなどのメッシュ袋に入れて持ち帰れば、そのままつるして冷暗所で保存できるのでとっても楽ちんです。
【エコバックの選び方】
エコバックの素材は洗えて、最終的に土に還る素材がよいでしょう。コットン、ジュート、ヘンプがおすすめです。
また、エコバックは製造過程で環境への負荷が大きいとも言われているので、新たに購入するのではなく、今持っているバックを使うとより環境に優しいですね。
【買い物の際に意識できること】
冷凍食品はプラスチックパッケージなしでは購入は難しいです。紙箱に入っていても冷凍焼け防止のため、内側はプラスチックコーティングされている場合がほとんどです。いつも購入している冷凍食品が本当に必要なものか、一度見直してみるのもよいでしょう。
東京近郊の量り売りショップ:
nue by Totoya(国分寺市、カフェ・スロー内)https://www.nuebytotoya.com/
•ラップの使用を控える
筆者撮影
ラップはたいていは1度使用すると捨ててしまいますよね。
そのため、食品保存やおにぎりやサンドイッチを包むときなどに、繰り返し使用できるエコラップを使用するのもおすすめです。
エコラップはコットンなどの生地とミツロウやホホバオイルなど、自然素材で作られています。ミツロウ、ホホバオイルは抗菌性に優れているので、食品の鮮度も保ってくれます。
自然素材で作られているので食材に触れても安心ですし、洗って何度も使えます。柄もかわいいもの、おしゃれなものがたくさんあります。
その他、ラップの代わりに、ガラス製容器や、琺瑯での保存もおすすめです。
■エコラップ
KoKeBee(エコラップ)https://kokebee.com/
Bee Eco Wraps Japan(エコラップ)https://sooooos.com/shop/beeecowraps/index
■保存容器
野田琺瑯(琺瑯)https://www.nodahoro.com/
•保冷剤の再利用
生ものや冷凍ものを購入すると付いてくる保冷剤。不要になったものは、回収、再利用しているスーパーやお店に持って行きます。
2021年9月10日より無印良品でも回収をスタートしています。また、クイーンズ伊勢丹でも保冷剤回収ボックスが設置されています。
そのほか、お近くのスーパーなどで保冷剤を回収している所を見つけてみてください。
•テイクアウトのお弁当にはお弁当箱を持参する、お弁当箱持参に対応してくれるお店で購入する
お弁当を買うときにも、プラスチックはたくさん使われています。お弁当箱、スプーンやフォーク、おしぼりの袋、持ち帰る際のビニール袋など。
すべてがプラスチック製品ということは珍しくありません。
最近では竹や紙素材のお弁当箱に入れてくれるお店や、お弁当の容器持ち込みで割引になるお店も出てきました。ぜひご自宅や職場の近くに、そんなカフェやお店がないか探してみてください。
東京近郊のカフェ:
いな暮らし(稲城市)https://inagurashi.com/
狛江カフェ&ギャラリー「広洋舎」(狛江市)https://www.koyosha-cafe.com/
•マイボトルを持ち歩く
今や、かなり多くの人がマイボトルを持参しているのではないでしょうか?
お気に入りのマイボトルに、家から好きな飲み物を入れて出かければ、ペットボトルゴミが簡単に減らせます。
温かい飲み物のテイクアウトには、サーモマグなど保温性のあるボトルもありますね。
マイボトルや、タンブラー持参で割引が受けられるお店もあります。
また、最近ではネットやアプリで給水場所を簡単に探せます。
ぜひ、通勤途中やお昼休みにお水を補給できる場所を探してみてください。
mymizu(給水スポットを探せるアプリ)https://www.mymizu.co/
Refill Japan (給水スポットを探せるサイト)https://www.refill-japan.org/
無印良品(給水スポット)https://www.muji.com/jp/ja/stories/food/520171
•ストローを断る
筆者撮影
お店でドリンクを注文した際には、ストローを断ることもできます。
ストローはほとんどが1回限りで捨てられてしまいます。洗って繰り返し使えるステンレス製、ガラス製のストローがおすすめです。また衛生上どうしても使い捨てが必要な場合には、無塩素漂白の紙ストローもあります。
•保存容器を考える
Eat Act Tokyo撮影
キッチンで使用するタッパーやジップロックなどの食品保存容器を見直してみるのもいい機会です。
新しく買い替えるときは、耐熱のガラス製の保存容器や琺瑯の容器に、ジップロックではなくシリコン製の保存袋を選ぶというのもおすすめです。
今あるものはむやみに捨てず(捨てるとごみになる)、ほかの使い道がないか考えてみましょう。
•自然石鹸を使用する
天然のオイルなどから作られた自然石鹸を使用することで、石鹸の包装に使用される袋やボトルのごみを減らすことができます。台所用の固形石鹸、固形のシャンプーやコンディショナーも販売されています。
石油由来の材料を使わず、コールドプロセス製法で作られた石鹸は体にも自然にも優しく、汚れ落ちもよいのにお肌にもやさしいのが特徴です。
石鹸は簡単に手作りできるので、ご自身のお気に入りの香りを入れて、オリジナルの石鹸づくりを楽しむのもいいかもしれません。
土に還る石鹸Soap Elements http://instagram.com/soap_elements
2.「暮らし編」
•天然素材の衣類を選択する
筆者撮影
プラスチック製品と聞いてすぐに洋服を想像する人は少ないですよね。毎日着ている洋服にもプラスチックは使われています。
ポリエステル、ナイロン、アクリルなどの合成繊維の洋服もプラスチックと同じ石油を原料とした成分からできています。合成繊維の洋服は、洗濯のたびに洗濯機の中で擦れることにより細かなプラスチック繊維が排水とともに下水に流れていき川や海へ流れていきます。
洋服やインナーを購入する際に、コットン、リネン、シルク、ウールなど天然繊維のものを選ぶことも、プラスチック・フリーにつながります。
いきなりクローゼットからすべての合成繊維の洋服をなくすのではなく、まずは手元にある天然繊維の洋服を出して新たなコーディネートを楽しんでみる、自分が好きなデザインのエシカルブランドを探してみる、天然繊維のインナーを身につけてみるなどからはじめてみてはいかがでしょうか。
ピープルツリー https://www.peopletree.co.jp/index.html
シサム工房 https://sisam.shop-pro.jp/
nanadecor https://nanadecor.com/index.html
Lunati canapa https://lunaticanapa.jp/
Pristine https://www.pristine.jp/shop/default.aspx
•生理用品を見直してみる
女性は月に一度の生理中、または、尿もれパッド(吸水ライナー)を日常的に使用されている方は、プラフリに参加するチャンスがあります。
それは、使い捨てナプキンやタンポン、尿もれパッド(吸水ライナー)の使用をやめることです。使い捨てナプキンにも高吸水性ポリマー(SAP)やポリエチレン製のメッシュシートなど、プラスチックが使われています。
使い捨てナプキンの代わりになるものは、布ナプキン、月経カップ、海綿タンポン、オーガニックコットンを使用した使い捨てナプキンなどがあります。
メイド・イン・アース(布ナプキン) https://www.made-in-earth.co.jp/
ナトラケア(紙ナプキン) https://www.natracare.jp/
3.「美容編」「そのほか」
•プラスチックフリー、ナチュラルなコスメや日焼け止めを選ぶ
Eat Act Tokyo
あなたが毎日使っているメイク用品は大丈夫ですか?これをきっかけに、ぜひ一度見直してみてください。日焼け止めをはじめ、歯磨きや洗顔料、ボディーソープなどのパーソナルケア製品には、マイクロプラスチック(マイクロビーズ)が含まれているものがあります。
最近では日本でも、成分もナチュラルで、肌にも環境にもやさしく、パッケージも環境に配慮された化粧品なども選べるようになってきました。
人にも自然にも、できる限り有害な成分が含まれていないものを選ぶだけでなく、パッケージもプラスチック容器に入っていないものを選択してみてください。
All Good https://allgoodproducts.jp/
Soap Elements http://instagram.com/soap_elements
•今あるプラスチック製品は大事に使う
まずは、今持っているプラスチック製品を大切に使うことも、ゴミを減らすことにつながります。
プラスチックの保存容器は、洗う際やレンジの熱などで劣化すると、製造過程で使用された添加物が流れだしてしまい体内に取り込んでしまう可能性があるため、食品の保存に使用するのではなく、小物の収納など工夫をして別の用途で使ってみるというのもおすすめです。
Plastic Free July(プラスチック・フリー・ジュライ)という取り組み
Plastic Free July(プラスチック・フリー・ジュライ)というキャンペーンをご存じですか?
オーストラリアで始まったPlastic Free Julyは、7月の間、プラスチックごみを減らそうというキャンペーンです。日本でもPlastic Free July Japanのこの活動に賛同し、活動を広め実践している人が増えてきました。
Plastic Free July(プラスチック・フリー・ジュライ)は自分の生活の中でできることから簡単にじめられるられることが特徴です。
参加方法は簡単です。
まず期間を決めます。1日、1週間、1か月、今後ずっとなど。
そしてプラスチックゴミが出ないよう、できることを実践していきます。
プラフリ生活まずは、気軽にはじめられることを
Plastic Free July(プラスチック・フリー・ジュライ)は7月に世界中で一斉に行いますが、プラフリ生活はいつでもはじめられます。
現代の生活で、完全にプラスチックフリーな生活は中々難しいことだと思います。ですが、私たちひとりひとりが無理なくできることから意識して、プラスチック製品(ごみ)を減らしていくことは可能です。
それには、気軽にはじめられることと、継続できることが大切です。
これを読んでいるあなたが、今日からはじめられること、やってみようと思ったことはありましたか?
これからの地球のために、自身の食の安全、健康のために、毎日の中でできることから実践してみませんか。
※この記事は、2021年7月に執筆し、2022年7月1日に更新しています
参考記事:
「プラスチック・フリー生活」シャルタル・プラモンドン、ジェイ・シンハ、服部雄一郎/訳
「プラスチックと歩む その誕生から持続可能な世界を目指すまで」ナタリー・ゴンタール、エレーヌ・サンジエ、臼井美子/監訳
文=板倉由佳