「味噌は医者いらず」という言葉があるように、味噌は昔から体にいい食べ物として知られています。
味噌には実にさまざまな効能があるのですが、最近では医学の側面からもその効果が期待されています。
では、味噌には一体どんな働きがあるのでしょうか。
目次
味噌の効能とは?
味噌に含まれている成分にはさまざまな働きや効果があることがわかっています。以下、簡単にまとめています。
・胃潰瘍予防効果
・消化促進
・整腸作用
・老化防止
・コレステロールの抑制
・脳卒中の予防
・疲労回復
・脳の新陳代謝の促進
・骨粗鬆症の予防
・美肌
など、私たちにとって嬉しい効果がたくさんあります(『お味噌の効能』広島大学 学術情報リポジトリより)。
また、放射線から体を守る働きやがんを予防する働き、糖尿病や肥満を改善する働きがあることも報告され、注目されています。
「発酵性大豆食品の摂取量が多いほど総死亡リスクが低い」という報告
2020年1月に国立がん研究センターが発表した『大豆および発酵性大豆製品の摂取量と総死亡率および特定の死亡率との関連』は大きな話題となったので記憶に新しいと思います。
この研究では、発酵性大豆食品の摂取量が多いほど、死亡リスクの低下がみられたと報告されています。
総大豆食品摂取量においては死亡との明らかな関連は見られなかったのですが、男女ともに発酵性大豆食品の摂取量が多いほど、死亡全体(総死亡)のリスクの低下がみられました。
さらには、循環器疾患の死亡については男女ともに納豆の摂取量が多いほどリスクが低下することを認めた、としています(『大豆食品、発酵性大豆食品の摂取量と死亡リスクの関連』多目的コホート研究,国立がん研究センター 社会と健康研究センター 予防研究グループより)。
味噌や納豆は、毎日食べているという方もいらっしゃると思いますが、毎日の食卓を見直して、もう少し積極的に食べてみようかな~なんて、改めて食事のメニューに加えたという方もきっと多いのでは!
昔から、味噌が体にいいというのは、私たち日本人にとって極々あたりまえのことですが、このニュースによって再び、日本の和食・伝統食・発酵食の重要性や可能性が伝わり、関心が高まるきっかけになっています。
味噌には放射線から体を守る働きがある
味噌についてはさまざまな効能がわかってきていますが、上記報告のほかにも国内外で注目されていることとして、味噌の放射線から体を守る働きがあります。
味噌には放射線被ばくから体を守ってくれる作用があることや、味噌を食べていると小腸の細胞の生まれ変わりが早いということ、味噌の熟成度合いによっても放射線から体を守る作用に違いがあることが確認されています。
これらの実験では、熟成度の高い味噌ほど効果が大きいことがわかっています。これには、味噌の褐色成分(茶色い色素)「メラノイジン」が大きく関係しているそうです。
メラノイジンとは、味噌が発酵熟成する過程で糖とアミノ酸が反応して起きる現象(メイラード反応)によって作られ、味噌やしょう油の茶色い色を生み出している成分です。
メイラード反応は、老化のもとになることで近年よく知られていますが、味噌などの食品の中で起こるメイラード反応はそれとは反対で、味噌やしょう油の中で生成されるメラノイジンは、抗酸化作用や整腸作用など体にいい働きがあることで知られています。
味噌、しょう油のメラノイジンの効果
- 美肌
- 便秘解消
- 血流改善
などがあげられます。
被爆後、味噌汁を食べて健康に長生きした話
医学的な研究報告だけでなく、長崎の被爆者たちが味噌汁を食べて健康的に長生きしたという話もあります。
味噌について調べたことがある方ならなんとなく聞いたことがあるかもしれませんね。
世界で初めて日本は長崎・広島に原爆が投下され被爆を経験した国ですが、中でも、長崎で被爆したあとに味噌汁を食べて過ごし、その後も健康に長生きされた秋月辰一郎医師のエピソードは有名です。
秋月医師や一緒過ごしていた同僚、患者たちは、爆心地からわずか1.4キロメートルのところで被爆しました。当時薬の調達も中々できない状態にあり、そんなときに患者の健康を守るには「玄米と味噌に頼るしかない」と決意した秋月医師。皆さんワカメの味噌汁を食べていたそうです。
このエピソードは、長年、放射線が生物に与える影響と味噌について研究してきた広島大学名誉教授渡邊敦光先生の「味噌力」という著書の中でも、詳しく紹介されています。
秋月医師やその同僚たちはまた、放射線で汚染された野菜を毎日味噌汁に入れて食べていたそうです。被爆間もないころは軽度の急性障害があったとのことですが早くに回復し、その後も健康に長生きされたということなので、本当に驚きです!
「味噌力」の中では、研究データをもとに味噌の力についてとても詳しく紹介されています。一般の人向けにとてもわかりやすくまとめられていますし、この一冊で十分に「味噌」について理解を深めることができるので、ぜひ読んでみてください。
まだまだある味噌の効能
これまでご紹介した以外にも実は、まだまだ味噌にはたくさんの効果や効能があります。
例えば、味噌は、二日酔いにいいということ。
味噌に含まれている「コリン」という物質が肝臓に入ったアルコールを早く体外に排出してくれて二日酔いが楽になるそうです。
また、年配の方はとくに気にしている味噌の「塩分」についても、塩分を味噌で摂る分には血圧は上がりにくいということがわかっています。
さらには、血糖値を下げる働きがあったり、肥満を抑制する働きがあったり、本当にたくさんの嬉しい作用があります。
また福岡のある幼稚園では給食に味噌汁を出すようにしたところ、子どもたちの低体温の症状の改善が見られ、アトピー症状も減ったということが報告されています。
ここまでたくさんの味噌の効果や効能についてご紹介してきましたが、味噌の種類によっても効果に違いがあるということもわかっています。
興味深いのが、米味噌・豆味噌・麦味噌それぞれの健康機能性を生かして、合わせ味噌の有効性も検証されていることです。いつか、味噌のパーソナライズ化が可能になり、自分の体調や症状別に味噌を選べるようになる日も来るかもしれませんね!さらなる味噌の可能性に期待がふくらみます。
参考:『味噌の健康機能性の多様性と合わせみその可能性に関する探査的研究』中央味噌研究所研究報告 第41号 (2020年3月発行)より
自分の健康は自分で守り育む時代こそ、一日一杯のお味噌汁
日本人にとって身近な味噌ですが、こんなにもすごいパワーを秘めていたなんて知らなかったという方も多いのでは。
これを機に食について見直し、毎日の食卓にぜひ味噌を役立てください。そして、子どもたちにも味噌のおいしさを味わってもらい、未来にもずっと日本の伝統食が残っていきますように。
そして、これからの時代、自分や家族の健康は自分たちで守り育むことが今まで以上に重要になります。
最近では、味噌汁離れがすすんでいるともいわれていますが、毎日の健康にぜひ一日一杯のお味噌汁からはじめてみませんか?