100人いれば100通りの顔や性格があるように、体の成長速度も抱える悩みも、全く同じ人はどこにもいません。 ですが、つい自分と周りの人を比較して、悩んだり不安になっていませんか。
思春期には体も心も大きく変化します。 第二次性徴※の始まりから終わりまでを「思春期」といいますが、この時期にはおそらく全員といっていいほど、自分の体のことで不安に感じたり、悩みを抱えたりすることがあるのではないでしょうか。
私も周りの友人たちもそうでした。
- 痩せたい
- もっと背が高くなりたい
- 体毛が濃くなってきて嫌だ
- いつ月経(生理)が始まるのか
- 学校にはどうやって生理用品を持っていけばいいのか
- 修学旅行やプールの日に生理がきたらどうしよう
など、たくさんの悩みがありました。 ですが知識があれば、体や心の変化・悩みに必要以上に心配しなくてよくなり、解決できることもあります。
今回は女性の思春期に起こる体の変化と月経について、月経中に使えるアイテムの選択肢などについてお伝えします。
月経を迎える、または月経が始まったばかりの10代の女性、またはそのご両親に読んでいただき、少しでも思春期特有の不安や疑問を減らすお手伝いができたら嬉しく思います。
※第二次性徴とは、およそ9歳ころから18歳ころまでの性ホルモンによって男女の体に変化がおこる時期のこと
目次
思春期に体が変化するのはなぜ?
思春期に体が変化するのはなぜかというと、脳の奥にある視床下部という部分が下垂体へ指令を出し、全身へ伝わります。 その指令を伝えるのはホルモンという物質です。
ホルモンは血液と一緒に血管の中を流れていき、体のさまざまな場所へ指令を伝えます。 思春期には特に「性ホルモン」というホルモンが急にたくさん作られて体を変化させます。
たとえば、男女共通の変化でいうと、身長が伸びる、ニキビができやすくなる、わきや性器のまわりに毛が生える、体のにおいがはっきりしてくる、などです。
男性は、ひげが生える、喉仏が出て声変わりする、体毛が濃くなる、精通があるなどの変化があり、女性は、胸が丸くふくらんでくる、おしりが丸く大きくなる、月経が始まるなどの変化があります。
また、性ホルモンは心が不安定になったり、悩みが多くなったりと、心にも影響を及ぼすといわれています。
月経(生理)のしくみ
生理は、正しくは「月経」といいます。 月経とは、月に1度くらい、膣から経血が出てくることです。
思春期になると性ホルモンの働きによって、卵巣や子宮も変化します。
ホルモンの作用で左右どちらかの卵巣内の1個の卵子が成熟します。 この時期に子宮内膜が膨らみ始めます。
およそ1か月に1度のサイクルで卵巣から成熟した卵子が飛び出します。 これを「排卵」といいます。 卵巣と子宮をつなぐ卵管が、排卵された卵子を取りこみます。
排卵が起こる少し前に子宮では内側を覆っている柔らかくて栄養たっぷりの子宮内膜が厚くなっていきます。
卵子が精子と出会わず受精卵ができなければ、子宮内膜は必要なくなります。 子宮内膜は28~35日くらい経つと剥がれ落ち、血液と混ざって膣口を通って、3~8日ほどかけて外に流れだします。
これを「経血」といい、この流れが「月経(生理)」です。 そして、初めての月経を「初潮」や「初経」といいます。
だいたい9~15歳くらいで初潮を迎えることが多いです。
初潮がくる前にはおりものの量が増えたり、ショーツに少し血がついたりすることがあります。 また、おしりが大きく丸みをおびてくるともいわれています。
ですが、個人差があるので必ずこのようなサインがあるというわけではありません。
妊娠中をのぞき、閉経※まではほぼ毎月月経がきます。
※閉経とは、月経が完全に停止した状態のこと。およそ50歳前後に閉経します。
月経(生理)中に使えるアイテム
月経(生理)期間中は、最初は下着に経血がつかないよう生理用品を使うことがほとんどです。 生理用品はおもに経血を吸収してくれるものです。
多くの人は初潮を迎えたときから、使い捨てのナプキンを使っていると思います。 それは使い捨てナプキン以外の選択肢を知らない、または知っていても使ったことがない、使い方を説明できない大人が多いからです。
ですが実は、月経中に使えるアイテムにはたくさんの種類があります。 それらついての知識があれば、選択肢が増え、体の悩みやライフスタイルに合わせて使い分けることができます。
たくさんある選択肢をまずは知って、そこから自分に合ったものを選んでいってください。 中には、生理用品がなくてもトイレで経血を出せるという人もいるんですよ。
生理用品、月経中に使えるものには以下のようなものがあります。
使い捨てナプキン
多くの方が使っている生理用品です。 おもにサニタリーショーツを履いてから、その上にテープでずれないように固定して使います。
夜用の大きなサイズからおりもの用の小さなサイズまであり、テープがナプキンの裏についているもの、羽がついていてそこにテープがついているものがあったり、大きさも形もさまざまな種類があり、選べます。
メリット:
使い捨てなので交換しすぐに捨てることができる
ドラッグストアやコンビニなどで簡単に購入できる
多くの人が使っているので情報や体験談が幅広くある
デメリット:
交換用ナプキンの持ち歩きが必要
使い捨てなのでごみが増える
ほぼ毎月購入が必要
収納スペースが必要で場所をとってしまう
デリケートゾーンのかぶれやかゆみがでることがある
タンポン
タンポンは膣に挿入して経血を吸収する、使い捨ての生理用品です。
メリット:
直接、膣へ挿入するので運動する際にずれない
プールや海に入れる
デリケートゾーンがかぶれにくい/蒸れにくい
挿入するから服に響かない
デメリット:
慣れるまで挿入が大変
交換用のタンポンの持ち歩きが必要
ごみが出る
膣に挿入するため膣を傷つけてしまう可能性がある
抜き忘れてしまい菌が繁殖してしまう可能性がある
吸水ショーツ
吸水ショーツはここ数年で簡単に購入することができるようになりました。まだ比較的新しいアイテムです。
メリット:
洗って繰り返し使える
ごみが出ない
外出先での交換が不要
普段履いているショーツと同じ感覚で使える
繰り返し使えるので経済的
デメリット:
経血を吸収してもショーツを交換しないため、同じショーツを履くのに抵抗がある
洗濯する前に経血を落とす必要がある(手洗いなど)
経血を吸収する部分が黒色で作られていることが多いため、経血の量や色を確認できず体調の変化に気づきにくい
月経カップ
月経カップとは、シリコン製のカップで、膣に直接挿入しカップに経血を溜めて使います。 経血が溜まったら交換します。
メリット:
繰り返し使えるのでごみがでない
収納場所が少なくて済む
タンポンと同様直接膣へ挿入するので運動する際にずれにくい
プールや海に入れる
デリケートゾーンがかぶれにくい/蒸れにくい
挿入するから服に響かない
デメリット:
使用後に洗ったり消毒が必要
挿入に慣れるまでが大変
交換のための月経カップや交換後の月経カップを持ち歩く必要がある
布ナプキン
筆者撮影
布ナプキンとは、布で作られている洗って繰り返し使えるナプキンのことです。 使い捨てナプキンと似たような形をしているものがほとんどですが、素材はオーガニックコットンやシルク、竹布など天然繊維で作られたものが多いです。
メリット:
洗って繰り返し使えるのでごみが出ない
肌あたりが柔らかくあたたかい
肌ストレスが少ない
天然素材のものは生分解される
経血の色・量・状態がしっかりと確認できる
デメリット:
お洗濯につけ置き時間が必要
乾くまでに時間がかかる
交換用の布ナプキンや使用後の布ナプキンを持ち歩く必要がある
いかがですか? 実は、月経中に使えるアイテムはこんなにあります。
それぞれメリットとデメリットがありますが、知らなかったものや使ってみたいものはありましたか?
ちなみに、筆者は15年ほど布ナプキンを愛用しています。
続けて、これらのアイテムの中でも私が布ナプキンを選び、みなさんへおすすめする理由についてお伝えします。
月経中のアイテムの中で、私が布ナプをおすすめする理由
私は布ナプキン(以下 布ナプ)を愛用しており、月経中に使用するアイテムでは布ナプをおすすめしてきました。 その理由は以下のとおりです。
- 天然繊維のものは、肌あたりが柔らかく、着け心地がよい
- 経血の状態を見ることができ、色や量の変化にすぐに気づける
- 生理痛の軽減、PMSなどイライラが減ったという人がいる
- ゴミがあまり出ない
- 天然繊維のものは生分解される
- 自分でも作れる
- 災害時にもすぐ対応できる(清潔なタオルなど身近なもので代用できる)
上記以外にも、布ナプを使用して月経がくるのが楽しみになった、不快な月経期間がまるで変った、月経の悩みが解消されたなど、たくさんの体験談を実際に聞いてきました。
もちろんいくつかのアイテムを組み合わせて使っている方もたくさんいます。
✔外出時は使い捨てナプキン、自宅では布ナプを使用
✔運動中は月経カップ、それ以外は布ナプを使用
✔量が多い日だけ吸水ショーツ、量が減ってきたら布ナプを使用
など、みなさんそれぞれ上手に使い分けをしています。
このようにご自身の生理のお悩みやライフスタイルに合わせて、月経期間が少しでも快適になるよう好みのアイテムを探して、試して、楽しんでみてください。
女性アスリート外来について
思春期には部活動やサークルなどで、スポーツに打ち込んでいる女性も多いと思います。 運動をしている女性は、運動量が多いことや体重制限などで月経が止まったり、月経がパフォーマンスに影響を与えることもあります。
10代のうちは月経周期がまだ安定していなかったり、体の変化が大きかったりするので、運動をするにあたり月経のことで悩んでいる方も多いです。
「女性アスリート外来」とは、無月経や生理不順といった女性アスリート特有の健康問題に対応する専門外来です。
アメリカスポーツ医学会から、2007年に「女性アスリートの三主徴(FAT:Female Athlete Triad)」というものが発表されました。
女性アスリートの三主徴
⚫︎利用可能エネルギー不足
⚫︎機能性視床下部性無月経
⚫︎骨粗鬆症
この三主徴があるアスリートは、疲労骨折のリスクが高まるといわれています。
特に「利用可能エネルギー不足」は、成長期における十分な成長を妨げたり、月経異常や無月経、初経が遅れたり、骨粗鬆症にもつながったりなど、大きな問題となるとされています。
女性アスリート外来では、そんな女性アスリートのさまざまな健康問題に対して相談にのり、治療をしてくれます。 また、病院や相談内容にもよりますが、ドーピングにならない薬を処方してくれたり、食事や生活のアドバイスもしてくれます。
スポーツをするうえで女性特有の悩みがある、運動量が多く生理が止まってしまったなど、体調面で不安がある場合には、家族やコーチに相談する、または女性アスリート外来を受診してみることを選択肢のひとつとして考えてみてください。
月経期間も自分らしく過ごそう
ここまで思春期の体の変化や月経のしくみ、生理用品・月経中に使えるアイテムなどについて書いてきました。
先述のとおり、100人いれば100通りの顔や性格があるように、体の成長速度も、抱える悩みも全く同じ人はどこにもいません。 月経や思春期の体の変化も100人いれば100通りです。
一般的な目安となる基準はありますが、当てはまらない人もいます。
本記事を読んで「自分の体を知りたくなった」「今ある不安を解消したい」という方で、まず何からしたらいいかわからない、誰かに相談しにくい場合は、ご自身の体を知ることからはじめてみてください(緊急性のある痛みがある場合や病気の場合には、専門の医療機関を受診することをおすすめします)。
今は月経の記録をつけたり、日々の体調の変化を入力できるアプリなどもありますし、手帳などに記入するのもよいと思います。 記録することで体の変化や不調のサイクルがわかり、不安の原因が見えてくるかもしれません。
また誰かに相談する際にも、記録しておくと伝えやすくなります。
誰でも体のことで悩むことはたくさんあります。 言いにくいこともあるかもしれませんが、決して恥ずかしいことではないのです。
あなたの悩んだ経験がいつか、誰かの助けやアドバイスにつながることもあるかもしれません。
体の悩みや月経の話は大声で誰にでも話せることではないかもしれませんが、ひとりで悩まず信頼できる友人や大人の人には話してみてください。 身近にも同じようなことで悩んだ経験を持つ人がいるかもしれません。
参考資料:
「こんにちは! 生理 生理と仲よくなるために大切なこと」 集英社 著者:ユミ・スタインズ、メリッサ・カン 画:ジェニー・レイサム 翻訳:北原 みのり
「10歳からのカラダ・性・ココロのいろいろブック」 ほるぷ出版 著者:アクロストン
「おうち性教育はじめます 一番やさしい!防犯・SEX・命の伝え方」 KADOKAWA 著者:フクチマミ、村瀬幸浩
「女子も!男子も!生理を知ろう 1生理ってなんだろう」 汐文社 著者:宋美玄
「女子も!男子も!生理を知ろう 3心と体の成長と生理」 汐文社 著者:宋美玄