今回は、自然にそった暮らし、七十二候の第四十三候「草露白」について。
草露白は、「くさのつゆしろし」と読みます。
二十四節気では「処暑」から「白露」へと移りました。草露白は、「白露」のはじめの七十二候、初候です。
いまの9月7日~11日ころになります。
七十二候は、自然に寄り添う暮らし方の知恵を紹介してくれています。
そのなかでも、EATでは旬の食材についてご紹介しています。自然にそった食べ方の参考にしていただけると嬉しいです。
二十四節気「白露(はくろ)」
白露とは、大気が冷えてきて、露ができはじめるころです。
残暑が引いて、本格的に秋になっていきます。
七十二候「草露白(くさのつゆしろし)」
新暦で9月7日~11日ころ。
草露白は、昼夜の気温差が大きくなり、朝には野の草に露が降りるころ。露が朝日を浴びて白く光って見えます。
9月9日は五節句のひとつ「重陽の節句(ちょうちょうのせっく)」です。旧暦では菊の花が咲くころだったので、「菊の節句」ともいわれています。菊酒を飲んだり、栗ご飯、なす料理を食べ、長寿や無病息災を祈る日です。
旬の草花「秋の七草」
「春の七草」は1月7日に正月料理で疲れた胃を休めたり、1年の無病息災を願い食べるものとして今でも有名ですが、「秋の七草」をご存知ですか?
秋の七草は、おみなえし、すすき、桔梗、なでしこ、藤袴、葛、萩です。
万葉集で山上憶良(やまのうえおくら)が二首の歌に詠んだことから、秋の七草として親しまれるようになったとされています。
春の七草のように食すのではなく、秋の七草は鑑賞してその美しさを楽しむものです。
【秋の七草】
- おみなえしは、乾燥させた根には薬効があり、古くから利尿や毒消しとして使用されてきました。
- すすきは、尾花とも呼ばれ、秋のお月見には欠かせない飾りです。
- 桔梗は、5cmほどの星型の花を咲かせます。根は生薬として、鎮咳、去痰の際に用いられてきました。
- なでしこは、花が「撫でたくなるほどかわいらしい」ことからその名がついたといわれています。
- 藤袴は、乾燥させると香りがよいため、香水や洗髪に用いられてきました。現在では絶滅の危機に瀕しています。
- 葛は、葛湯や葛きり、葛餅など今でも馴染みのある植物です。
- 萩は、秋のお彼岸にお供えする「おはぎ」の由来にもなっているといわれています。
【秋の七草の覚え方】
- 語呂合わせ「お好きな服は?」
お=おみなえし
す=すすき
き=桔梗
な=なでしこ
ふ=藤袴
く=葛
は=萩 - 「5・7・5・7」で覚える
はぎ・ききょう、くず・ふじばかま、おみなえし、すすき・なでしこ
の順で覚える。
実は、絶滅の危機にある秋の七草
古くには万葉集にもおさめられている秋の七草について。昔から、そして現代でも日本人に親しまれているこれらの植物ですが、実は絶滅危惧種に指定されています。
「ハギ」 「ススキ」 「クズ」 「カワラナデシコ」 「オミナエシ」 「フジバカマ」 「キキョウ」 ―の7種のうち、 環境省の絶滅危惧類 (VU) にキキョウが、 準絶滅危惧 (NT) にフジバカマが指定されている。 丹波地域では、 カワラナデシコとオミナエシも減少の一途をたどっている。
出典:『秋の「七草」「三草」に? キキョウ、フジバカマ絶滅の危機』丹波新聞
残念ですがこのままでは、遠くない未来に秋の三草・二草になってしまうかもしれませんね。
秋の七草を探したり飾ったりして、秋を楽しみながら、これから先も美しい自然を残せるように、身近な自然を大切に慈しんでいきたいですね。
【七十二候とは】 日本には、一年を4つに分けた「春夏秋冬」のほかに、一年を24等分し季節を表す「二十四節気」、さらに細かく一年を72等分した「七十二候」という暦があります。 七十二候は、四季折々のできごとをそのまま名前にしていて、5日ごとに新しい季節に移ります。 日本人は昔から、七十二候を田植えや稲刈りなど農耕の目安にし、節分やお彼岸、土用など季節の節目を知る暦として使っています。今では私たちの暮らしの中に溶け込み、馴染み深いものも少なくありません。また、七十二候では、植物や生き物たち、旬の食材などが紹介され、こまやかな季節の移ろいを感じるとることができます。 気候変動によって気候の変化も大きい現代には、少しずれているところもあるかもしれませんが、自然に寄り添う暮らしを思い出させてくれる知恵がいっぱいつまっています。 |
参考:白井明大・有賀一広(2020)『日本の七十二候を楽しむー旧暦のある暮らしー』角川書店.
写真=pixabay
文=板倉由佳